JDreamⅢから社会動向を読み取り、マーケティング戦略に活用

横河電機株式会社 様

横河電機株式会社

横河電機株式会社

マーケティング本部 事業開発センター
マネージャー 村上 譲司 様

IA-PS事業本部 インフォメーションテクノロジーセンター
CX事業戦略部 技術コンサルティング課 山田 悠 様

マーケティング本部 事業開発センター 知的財産部
マネージャー 岡 貞治 様

マーケティング本部 事業開発センター 知的財産部
技術図書室担当 山村 智子 様

導入効果
  • 文献に記載される競合他社の研究や課題から、業界や製品に関する社会動向を予測
  • ユーザSDIによる定期的な文献情報の配信が、研究者や企画部門の読み解くスキルを向上
  • 簡単操作で必要文献を入手できるので、様々な部門で利用者が拡大

明日の課題解決のため、新しい価値共創を顧客とともに目指す

1915年(大正4年)に創立された横河電機は、計測、制御、情報の技術を軸とした最先端の製品やソリューションを産業界に提供。世界に先駆けた、プラント生産設備の制御・運転監視を行う「分散形制御システム」の開発等、高い研究開発力と製品力によって、石油、ガス、化学、電力、鉄鋼、紙パルプ、薬品、食品などさまざまな産業の発展を支えてきた。

昨今、急速に進むIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの情報技術革新が産業の姿を変革しようとしているいま、横河電機が2015年に策定した長期経営構想において目指すべき方向性を示す「ビジョンステートメント」として挙げるのが「YOKOGAWAは"Process Co-Innovation"(プロセスコ・イノベーション)を通じて、お客様と共に明日をひらく新しい価値を創造します」だ。

マーケティング本部・事業開発センター・マネージャーの村上さんは「お客様のやりたいこと(課題解決)を一緒に実現する企業でありたいという意志を示した言葉です」と解説する。それは、多岐にわたる分野の技術を結集し、顧客課題を解決するというオートメーションの将来像。実際、横河電機が顧客に提供するソリューションは企業間のサプライチェーンなど、あらゆる情報やモノの流れへと拡大し続けているという。

社会的動向を踏まえた技術開発戦略により、顧客要望を実現

顧客と一緒になって製品化した、設備保全ソリューション「Sushi Sensor」

横河電機が携わるオートメーション分野においても、経験に基づく人による監視・点検というアナログ手段から、工場全体に設置されたセンサで、機器の状態をデータで監視・分析するスマートファクトリー化への変革が急速に進んでいる。

この急速に進むデジタル化は2000年前半頃から大きく社会を変革させる可能性があることが提唱されてきた。例えば、2004年に「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)の概念をウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が発表し、いま人々の予想を超える速度で浸透している。村上さんは「顧客のニーズに迅速かつ的確に応えていくには、要素技術の動向だけでなく社会の変化を幅広く捉えておくことが不可欠な時代になってきました」と語る。

横河電機が技術動向と社会的変化をいち早く捉え、お客様のDXを実現するソリューションを提供した最近の一例としては、2018年3月に販売した一体形無線振動センサXS770Aをはじめとする「Sushi Sensor(スシセンサ)※」があるという。

設備の老朽化や高齢化、少子化に起因する人手不足という問題と、それに対する自動化、データ活用といった社会的なニーズの高まりを捉え、その予測を元にお客様へのヒヤリングを実施。捉えたニーズの裏付けと必要とされる要求仕様の定義をおこなう一方で、LPWA(Low Power Wide Area:省電力、長距離通信)などの最新技術動向をふまえた要素技術の開発を進め、実環境での評価を繰り返しながらお客様と一緒になって製品化したのが、通信機能とセンサ機能が一体となったIndustrial IoT向け設備保全ソリューション「Sushi Sensor」だ。

  • 「Sushi Sensor」は横河電機株式会社の登録商標です。

マーケティング調査に文献の"研究の背景"や"今後の課題"を活用

村上さんが社会および技術の動向を捉えるための情報源として活用しているのがJDreamⅢだ。開発部門に所属していた時とマーケティングに携わるようになってからでは論文の読み方が大きく変わったという。

「開発部門に所属していた時は、開発にかかわる科学的なエビデンスデータを収集するのが第一だったが、マーケティング部門に所属してからは、科学的な内容だけでなく、競合他社や同分野の研究者が考える"研究の背景"や最後に添えられている"今後の課題"などに注目。背景や課題情報にニュースや社会科学の論文などから得られる社会の潮流を重ね合わせるマーケティング視点にて、文献を読み込むことで、業界や製品に関する今後の社会動向を予測している。予測結果は、技術コンサルティング会社がまとめる予測レポートとは違うこともある」と村上さんは解説する。

収集した情報群から得られた結果は、マインドマップ(mind map:考えていることを脳内に近い形に描き出すことで、記憶の整理や発想をしやすくするものにまとめる手法)化して、マーケティング部門だけでなく、社内の技術者にも提示。マーケティングと開発部門が同じ方向性を認識したうえで、業務を進めることができるようになり、新たなビジネスの創出に役立っているという。

精度の高い検索結果を配信するSDIが情報活用を促進

村上さんをはじめグループ社員のために技術情報の収集と調査をサポートするのが事業開発センター知的財産部に属する「技術図書室」だ。「技術図書室」ではJDreamⅢをはじめオンラインジャーナルなどの契約データベースを管理。JDreamⅢについては、利用申請をした社員にIDとパスワードを発行するほか、JDreamⅢの特長や使い方をメールやホームページで紹介。また新人を含む図書室の利用者全員に対するガイダンスを、サービス提供元のジー・サーチに依頼し、年1回開催している。

「技術図書室」を担当する山村さんは利用者に対して、JDreamⅢの特長や使い方だけでなく、JDreamⅢの検索結果から契約するオンラインジャーナルを確認する方法の説明など、幅広い情報源から必要な情報が入手できるようアドバイスも行っているという。また、より正確性が求められる精度の高い検索が必要なケースは、利用者に代わって山村さんが代行で調査している。

この代行調査を活用しているのが村上さんだ。村上さんは自分でも検索も行うが、定期的に情報収集することが必要な重要なテーマについては、山村さんに検索式の作成を依頼しているという。山村さんは依頼内容を元に、アドバンスドサーチで予備検索を行い、ヒットした文献の抄録やシソーラス用語などを参考にしながら、村上さんの期待に添った検索式を作成。その作成した検索式をJDreamⅢのSDI機能に登録している。

村上さんは、「JDreamⅢは、国内外の情報を幅広く収録している上、抄録を日本語で読めるので、数多くの文献に目を通す作業効率がよい」という。山村さんは「現在は村上マネージャーの依頼で40件の検索式を作成し、最新情報を研究者に届けています。村上マネージャーには、研究者にもっと文献を読んで活用できる"力"をつけて欲しいという思いがあり、私はそのお手伝いです」と話す。

実際、社内での文献活用は「技術図書室」の取り組みが社内に認知され、2013年からの3年間と比較すると、複写依頼数が3倍以上に増えているとのこと。

初心者でもマニュアルを見ずに必要な情報が入手できるクイックサーチ

「お客様に満足のいくサービスを提供するためにも、論文情報を使いこなし、技術や社会の変化にリアルタイムに対応できるようにしていきたい」と語る山田さん

横河電機では「技術図書室」の働きかけもあり、さまざまな部門でJDreamⅢの利用者が増えている。IA-PS事業本部インフォメーションテクノロジーセンターで「Sushi Sensor」などのマーケティングや広報など顧客へのコンサルティングを担当している山田さんは、顧客から依頼のあった調査を行っているときに論文入手が必要になったという。そのとき「技術図書館」からのメールマガジンを思い出し、初めて利用申請をしたという。

山田さんは「今回初めてログインし、クイックサーチを利用したのですが、マニュアルを見なくても、感覚的な操作で必要な論文が見つかり、複写依頼した論文もすぐに入手できたので、とても助かりました。JDreamⅢで提供される文献はすべて著作権処理済みと明記されているので安心して利用できます」と話す。

また、マーケティング部門における村上さんらの取り組みや結果を整理するノウハウを知り、顧客とより深いコミュニケーションを実現するためにもJDreamⅢを活用していきたいという。山田さんは「プラントを何年も稼働し続けるということは、本当に大変なことなんです。お客様からは、横河電機はトラブルがあったときにすぐに駆けつけ、そして最後まで逃げずに付き合ってくれると、高い評価をいただいています。お客様に満足のいくサービスを提供するためにも、論文情報を使いこなし、技術や社会の変化にリアルタイムに対応できるようにしていきたいと思います」とのこと。

そのうえで「調査によっては、短時間で結果を把握し、報告しなければならない場合もある。文献の被引用数の多い順にタイトルリストの並べ替えができると、文献の注目度を判断する材料になりますし、また、文献の被引用関係を視覚的に見ることで、関連文献との関連性やその分野における主流な説などがつかみやすいと思う」と、顧客とのコミュニケーションを重視するコンサルティング視点から機能追加を要望された。

研究者の"夢"の実現に向けJDreamⅢのサポートが重要

「SDIの結果を社内に発信することで、社員が情報をより深く読み取るスキルが高まってくれることを期待しています」と語る村上さん

JDreamⅢで得られる文献情報を基礎研究からマーケティングまで幅広く活用するようになった横河電機。山田さんは「文献を少し先を見る道具として使用し、お客様の課題解決につなげるのが私たちコンサルティングの仕事」と話す。

また、村上さんは「SDIの結果を社内に発信することで、社員が情報をより深く読み取るスキルが高まってくれることを期待しています。企画部門でも、よく読んでくれている人の企画書は説得力のあるものになっています」とこれまでの取り組みを振り返る。

こうしたJDreamⅢを利用した情報活用スキルは研究者やエンジニアの可能性も広げてくれる。村上さんは「現代の研究者やエンジニアは辛い状態に置かれています」と指摘する。"研究者の夢"である新技術を生み出すことより、価値を生み出さなければいけないという課題を突きつけられているからだ。優秀な研究者やエンジニアは30代後半になれば、技術と社会とのつながりを意識した"夢を実現するためのストーリー"を持ち、実現に向けて、わかりやすくそのアイデアを表現できるものだが、すべての人ができるわけではない。うまく表現できない場合には、せっかくのいい"夢"が実現できない場合もある。

村上さんは最後に、「情報をうまく整理し技術と社会的価値の関係をデジタルダッシュボード(ビジネスの状態を視覚化し確認できるようにする管理ツール)に表すスキルを身につければ、夢を実現する手助けになる」と指摘する。研究者やエンジニアをサポートするため、JDreamⅢの研究・技術情報と新聞や市場などの社会動向を示す情報を結び付け、その関係性をデジタルダッシュボードの形式で、わかりやすく提供していくことが、JDreamⅢが目指すべき方向性になるだろう。

取材・執筆:科学ライター 荒川 直樹(アースワークス)

ご活用いただいているサービス・機能

クイックサーチ

検索語を自動展開する「関連語検索」や入力を補助する「サジェスト機能」によって、簡単入力で最適検索が可能な検索モード。検索結果を簡単に絞り込める「絞り込み機能」も搭載。直感的操作での検索が可能。

JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。

ユーザSDI

検索条件をあらかじめ登録しておくことにより、データベースが更新されるごとに条件にあった回答結果をメール配信するサービス。

ユーザSDIはJSTPlus、JMEDPlus、JAPICDOCファイルで利用可能。ユーザSDIのご利用にはJDreamⅢ検索サービス"企業向け固定料金_ユーザSDIプラン"のお申込みが必要です。

アドバンスドサーチ

検索するフィールド指定や演算子を用いた詳細条件の指定が可能な検索モード。詳細条件を参照する検索補助機能が充実。

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引用・被引用情報

1995年以降に発行された国内の学会誌などの引用・被引用情報を収録。アドバンスドサーチではヒットした文献に引用関係の文献も加えた引用検索機能がご利用いただけます。

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