研究者への継続的サポートによって研究所全体の情報活用能力を向上

株式会社ファンケル 様

株式会社ファンケル

株式会社ファンケル

総合研究所 研究推進室
山中 とも子 様

導入効果
  • 文献調査に欠かせない標準ツールとして活用している
  • 整備されたJSTシソーラス用語を用いた検索で、研究者の情報収集を効率化
  • 海外文献の抄録も日本語で確認できる
  • 可視化機能の活用で検索効率アップを図っている

安心・安全・やさしさを追及し、真に価値ある商品を創出

新商品の創出に向け研究開発を進めている「ファンケル総合研究所」

株式会社ファンケルは、"不安・不便・不満・・・「不」のつく言葉を世の中からなくしたい"という企業理念のもと、安心・安全・やさしさを追求した化粧品、サプリメント、発芽米、青汁といった事業を展開している。

企業理念に基づく真に価値ある新商品の創出に向け日々、研究開発を進めるファンケル総合研究所は、「化粧品研究所」「機能性食品研究所」「ビューティサイエンス研究センター」「ヘルスサイエンス研究センター」「イノベーション研究センター」「安全性品質研究センター」「研究推進室」という7組織で構成され、健康・美容サイエンスに関する基礎研究から新商品の開発、さらには機能性表示食品申請など一貫した研究活動を実施している。

安心の完全固定料金により研究者自身の検索が大幅に増加

効率的な研究開発のサポート役を担う「研究推進室」。各部門から寄せられる多様な情報検索依頼に応えると共に、全ての研究者を対象とした検索教育を行っている研究推進室管理グループの山中さんは、「化粧品、機能性食品においてもっとも重要な安全性情報の調査、高い専門性を必要とする化合物検索、特許情報検索は検索の専門家(サーチャー)が行うことが多いが、研究活動に必要な一般文献調査は研究者自身が行える体制を整えている」と話す。

研究推進室では様々な調査ニーズに応えられるよう複数の科学技術データベースを導入し、研究者にも利用してもらっているが、JDreamⅢについて山中さんは「国内文献の収録において最も充実したデータベースであるとともに、幅広い領域の国内外の情報を収録しているため、弊社の研究領域には使いやすいデータベース。検索の専門家である私たちも、研究テーマ探索や機能性表示食品の申請調査など様々な目的で活用している。研究者にとっても海外文献の抄録を日本語で読めるので、慣れない分野の調査を行う場合でも、検索をスムーズに行うことができる。親しみやすさから多くの研究者が最初に選択するデータベースがJDreamⅢだ」と解説する。

2018年度から開始された完全固定料金も研究者自身の検索を活性化させているポイントだ。「2017年度までは利用上限が設定された料金プランだったため、管理者は利用状況を定期的に管理する必要があった。一方、研究者も利用額に上限があることから、利用に消極的な意識を持つ研究者も多く、年度末に未活用分の利用推奨をアナウンスする年もあった。完全固定料金への変更で、研究者の意識が変わったため、今まで以上に利用促進に力を注くことができる」と山中さんは話す。実際、2018年度の利用実績を2017年度と比較すると、従量課金ベースで2.5倍程度活用されている。

検索スキルの向上に向け、コース別の検索教育を実施

山中さんは研究者自身が検索できるよう、情報検索教育にも力を入れている。研究者の検索スキルに相違があるため講習会は「初級」「おさらい」「中級」「新機能説明」の4コースを開催。講習時間はそれぞれ約90分。研究者は必要に応じて複数回受講することが可能だ。講習会では研究者の理解度を高めるため操作実習も合わせて実施。山中さんは「実際にJDreamⅢを操作してもらうと研究者の理解度が高まることがわかる。講習会への参加人数が多く、契約同時ログイン数の上限を超える場合、提供元のジーサーチに相談すると、講習会用のデモID貸与や、一時的なログイン数の増設を検討・対応してくれるので、大変助かる」と話す。

各コース開催概要

  1. 初級

    研究所に配属された新入社員(中途入社を含む)が必ず受講する講習会。基本的な操作方法と一部の検索支援機能を学ぶ。

  2. おさらい

    「初級」コースを受講はしたが、あまり使っていないので、おさらいしたいという研究者が対象。内容は「初級」と同じだが、検索支援機能の説明はより詳しくなっている。

  3. 中級

    基本操作はできるが、よりスキルアップしたいという研究者が対象。研究部門ごとに少人数で受講する。このコースでは、予め宿題として「検索シート」が渡され、そこに「調査したいテーマ」、「検索概念とその組み立て」、「概念に対応させた検索語」などを書き入れ、自分で検索式を作成し、事前に提出する。それを講習会で添削することになるが「シートの添削が検索スキルのアップにつながったという声も多い」(山中さん)という。

  4. 新機能説明

    JDreamⅢを利用している研究者に対して、新たに加わった新機能を説明する講習会を適宜行う。

JSTシソーラスへの理解と活用が検索スキルアップのポイント

講習会を毎年継続開催することで研究者の検索スキルを向上させているが、研究者からは「検索に最適なキーワードを入力することが難しい。どうすればよいか」とよく相談されると山中さんは話す。このことから山中さんが考える検索スキルの重要なポイントの一つは、検索に適した用語(統制語)であるJSTシソーラスへの理解を深めてもらうことだという。

JDreamⅢがGoogle Scholarなど無料の科学技術データベースと最も違う点の一つは、文献情報にJSTシソーラスが付与されていることだ。山中さんは「講習会で、自由に思いついたキーワードのみの検索と、キーワードにJSTシソーラスを加えた検索を比較してもらうと、ヒット数の違いに驚く研究者は多い。このことからも講習会ではJSTシソーラスの理解を高める説明を行っている」と話す。

最近になって、よい検索結果を出せるようになった研究者に山中さんが尋ねてみると、「講習会で学んだ検索支援機能のJSTシソーラスブラウザを使うようになった」という。研究者が利用したJSTシソーラスブラウザは、思いついた言葉を入力して検索すると、その語に対応する索引語(シソーラス用語、準シソーラス用語、化学物質名)の詳細情報(同義語などの他の語との関連関係)を参照・検索式展開ができる非常に便利な機能だ。研究者がJSTシソーラスの理解を深め、JSTシソーラスブラウザなどの検索機能を活用することは、最適キーワードで検索することであり、検索効率をアップさせることができる。

研究者が求めるタイミングの検索に保存式を有効活用

研究推進室では研究テーマに関する新着情報の定期収集を推奨しているが、マニュアル検索による収集方法を案内していることが特長だ。
マニュアル検索は式保存の機能を利用して次の手順で行われている。

  1. JDreamⅢに検索式を保存 ※期間指定条件も式に含める
  2. 保存式で検索処理(前回入手した期間以降の条件に変更し直し、検索処理)
  3. 検索結果の回答表示

式保存の利用には追加費用がかからない。いつでも保存された検索式を利用することができるため、情報が必要となるタイミング(例:年2回、各月など)で保存式を検索処理できるというメリットがある一方、定期的にマニュアル処理を行わなければならない負荷がかかるデメリットもある。

この負荷を軽減するため、研究者個人ではなく、研究チーム単位で実施する取り組みをサポートしている。「チーム内の担当者が必要なタイミングで検索できるよう、呼び出した保存式の実行方法、検索結果に対する期間の絞り込み方法(更新回数(/RG)や発行年)など、保存検索式の活用手順について各チームに教えている」と山中さんはいう。

新着情報の定期収集の取り組みは継続的にサポートしており、"広めの配信結果にしたい、開発方針の変更によりキーワードを変更したい"といった、研究チームのニーズ変化に迅速に対応しているという。

可視化機能による絞り込みポイントの気づきと調査の効率化

情報活用を促進するためのサポート機能が豊富なこともJDreamⅢの魅力の一つだ。山中さんによれば、検索教育によってJDreamⅢをある程度使いこなせるようになった研究者が注目する機能の一つが可視化だという。可視化は得られた文献検索の結果を、発行年、国、シソーラス、著者ID、所属機関などによってグラフ化する機能である。

例えば、検索結果の全体を俯瞰するためには、全ての書誌・抄録に目を通す必要があり、思いつくキーワードによる検索で得られた件数が多かった場合には、時間をかけて対応する必要があった。しかしながら検索で得られた結果をグラフ化すると、発表文献数が増えているかどうか、もっとも影響力のある著者や著者所属機関が何かなど、全体傾向が一目で分かるようになるというわけだ。

山中さんは「研究者は様々な目的で調査しているが、全体を把握するための読み込みには時間がかかるという課題があった。それが可視化によって短時間で全体傾向が把握でき、そのなかから必要な検索結果をピンポイントで入手することもできるようになった。うまく使うと格段に効率よく欲しいものが見つかる」と解説する。また、「これまで可視化機能を使いこなせている人は少なかったが、操作を覚えたい希望者と一緒に操作することで基本的な使い方を習得してもらい、研究に活用している例も多くなった」と話す。

可視化を体験した研究者に可視化機能に関するアンケートをとったところ、「新しいテーマの競合先」「競合他社の研究動向および大学とのつながり」「トレンド予測」「シーズ発掘」など、さまざまな用途に使いたいという声が挙げられたという。

インフォプロや研究者のスキルアップにつながる機能強化に期待

ファンケルの研究の歴史と研究の成果である商品が並ぶ研究所のエントランス

クイックサーチの機能向上、IPC(国際特許分類)付与など、JDreamⅢの新たな機能への期待も大きいようだ。新たなクイックサーチでは、思いついたキーワードの入力で、シソーラス用語や同義語も自動展開する「関連語検索機能」によって、JSTシソーラスをあまり理解されていない研究者でも、網羅性の高い検索が検索ができるようになった他、「絞り込み機能」の強化による利便性の向上、「類似文献検索機能」による検索の効率化といった高度な検索サポート機能の提供が開始された。

山中さんは新機能について「これまで検索教育コースでは、アドバンスドサーチを利用してきた。より精度の高い検索を実現するために挑戦して欲しかったからだ。だが、クイックサーチでもシソーラス用語を含む関連語の検索処理が自動的に行われること、また研究者が展開された検索式を視覚的に確認することができるので、JSTシソーラスを意識してもらうことができる。今後はクイックサーチを予備調査に用いるなど、アドバンスドサーチとの使いわけや連携した検索方法についても新たな情報提供を検討していきたい」と話す。またIPC付与についても、「特許と文献を同じ軸で解析できる。文献を解析することで、特許につながる技術動向を推測できる可能性がある」と期待している。

インタビューの最後に、山中さんにこれからの目標についてお聞きすると「社内講習会を通じて研究者たちの文献検索能力を高める努力を行っている。研究者がある程度自分で検索できるようになれば、私たちは難しい調査や、研究開発推進のための一歩進んだ情報提供に時間を割くことができるようになる。そのために社外セミナー、研究会等に積極的に参加して、インフォプロとして必要な調査能力に加え、解析能力などの+αの力をつけていきたい」と話す。JDreamⅢの機能強化は、山中さんたちの目標実現を力強くサポートしていくことになるだろう。

取材・執筆:科学ライター 荒川 直樹(アースワークス)

ご活用いただいているサービス・機能

JST科学技術用語シソーラス

科学技術振興機構(JST)によって作成された科学技術全分野の専門用語を体系的に整理した辞書。技術用語の同義関係や、階層関係などによって体系化。文献情報に適切なシソーラス用語が付与され、検索使用が可能。

JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。

検索式保存

作成した検索履歴を検索式の形でJDreamⅢ上で保存可能。保存した検索式はいつでも利用可能。

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可視化機能

検索結果を可視化(グラフ化)すること。検索結果全体の俯瞰や、経年による変化から、気になるポイントに絞り込むことが可能。

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機能性表示食品調査

機能性表示食品申請を行うための「安全性の根拠」や「機能性の根拠」が記載された文献を調査すること。申請のためには十分な評価を行うことが求められるため、インターネットの検索だけでなく、信頼性の高い情報源を収録しているJDreamⅢの活用が重要。

JDreamⅢ検索サービスのご契約有無に関わらず、機能性表示食品調査は代行調査を承っております。

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